占いやオカルトなど、スピリチュアルにハマる人は少なくない。
しかも、中高年になってから、この「目に見えない世界」に没入する人もいます。
もちろん、適度に楽しむならいいが、一歩間違えれば「助言者に財産をすべて取られる」「いつの間にか離婚している」など、“地獄”を見るケースもあるわけです。
スピリチュアルにドハマリした失敗談のインタビューをまとめてみました。
恐ろしき「見えない世界」の被害者

いつの頃からでしょうか?
すっかり定着した「スピリチュアル」という言葉。
占いや霊的なもの、オカルトなどを指して使われます。
これまでに占いを受けた人は多くいるだろうし、なかにはそのアドバイスに影響された、感化された人もいるはずです。
もちろん、それ自体は何も問題ないんですよね。
しかし、こういったスピリチュアルの世界は、“ハマり方”を間違えると大きな失敗へと結びつくと思うんです。
2017年1月、東京地裁で行われた裁判では、当時20代の女性が占い師にマインドコントロールされ、1億円以上騙し取られたと訴えたことが記憶に新しいところです。
女性は風俗店で働くように命令され、禁止されている「本番行為」を行うよう指示されたとか・・・。
そしてその収入をすべて占い師に渡したという。
判決では、占い師に9800万円の賠償支払いが命じられた。
歌手の辺見マリさんは、かつてスピリチュアルの世界を利用した「拝み屋」という人に洗脳され、5億円を失った。
また、真偽のほどは別として、ほかにもたくさんの芸能人・有名人が「洗脳された」とニュースになっています。
その入り口として、スピリチュアルが使われることは多い。
不思議なのは、中高年になってからその世界にハマる、あるいはハマりすぎる人たちです。
なぜ世の中を知り、経験を積んでから「見えない世界」に没入するのでしょうか?
もちろん、健全に付き合えればいいが、前述のような失敗もあるわけです。
果たして、良いハマり方と悪いハマり方の違いはどこにあるのか不思議に思います。
専門家の意見を聞くと、「ハマること自体が危険」という気もしてきますが……。
そこで、中高年がスピリチュアルで失敗したエピソードを載せつつ、失敗に陥るパターンを識者に聞いてみました。
お守りや水晶に◯万円、ためらいなく大金を投じる人たち
スピリチュアルにおける失敗として、まず挙げたいのが「お金」に絡む失敗。
Tさん(40代男性)の例を以下に紹介したい。
「会社を辞め、転職先が見つからず焦っていたとき、ある転職セミナーで女性と知り合いました。私があまりに悩んでいるところを見て、『仕事や会社という視点から一度離れたアドバイスを聞いてみては』と言われ、カウンセラーを名乗る男性のところへ連れていかれました」
カウンセラーの男性は、手を見たり首筋を触ったりしながら、Tさんの性格を言い当てたという。そして、Tさんも精神的に疲弊していたため、そのアドバイスを貴重に感じた。やがて「足繁く通ってアドバイスを求めるようになった」と言います。
「それから2ヵ月ほど通ったのですが、なぜか相談料はどんどん高くなり、最終的には1回6万円ほどに。それでもつい止められず通いました。たまたまその時期に就職が決まり、忙しくなったので行かなくなりましたが、今考えると『なぜ、あんなお金を払ったんだろう』と不思議です」
このエピソードは、お金絡みでの失敗における「典型」といえよう。“洗脳”されてしまったパターンも、このような形が多いわけです。
そのほか、こんな例もある。
「友人の女性(40代)と旅行に行ったとき、有名な神社の近くで占いをしてもらいました。それは良かったのですが、最後にお守りを勧められると、その友人は迷わず一番高い3万円のものを買いました。正式な神社のお守りでもないし、通りすがりのお店でよくそんな高いものを買えるなと……。購入後、『これがあれば大丈夫な気がする!』と言っていて、『もういい歳なのに心配だな』と思いました」(40代女性)
「ある日、長年の付き合いがある女性の家へ久々に行きました。すると、見たことのない大きな水晶が。友人は自分から水晶の話をし出し、『手をかざすと何か感じない?』と真剣に聞いてきます。私は動揺しながら『いや、あんまり感じないかな……』と返すのが精一杯。その話は延々と続き、なんと水晶は15万円で買ったとか。それ以来、私もその世界に勧誘されそうな気がして、彼女とは疎遠になりました」(30代女性)
スピリチュアルのすべてがこのようなケースに発展するとは限らないんですよ。
しかし、周りが思わず首をかしげるような形で、大金を失う事例は少なくないわけです。
会社経営にさえかかわる失敗もこの世では起きている
中高年になれば、家族や仕事など“背負うもの”も大きくなる。
そして、スピリチュアルにハマった結果、それを失ってしまった人もいる。
60代に入った会社経営者のSさん(男性)は、長年付き合っていた代理業者との契約を突然打ち切った。それ自体はよくある話だが、打ち切られた側には不思議な“違和感”があった。その打ち切られた代理業者の担当者が言う。
「契約を打ち切るとき、『本当にごめんなさい。あなたたちは何も悪くないんです』としきりに言われました。『お世話になっている方にお願いしなければならず…』と繰り返すのみで、結局なぜ契約を他に変えたのかよくわかりませんでした」
その後、Sさんは代理業者のところをよく訪れた。
すでに契約を打ち切っているのにもかかわらず、である。
その代理業者に対しては、悪い評価をしているとか、嫌悪しているという雰囲気は見られなかった。
そしてある日、些細な出来事を機に契約打ち切りの“真相”がわかった。
「Sさんがフラッと会社に訪れた日、世間話で『肩こりがどうしようもなくて』と話したんです。すると、『ちょっといい?』と言われて、肩に手を当て、何かブツブツ言ったんですね。しばらくして『これで大丈夫だと思う!』と……。一瞬ワケがわからなかったのですが、その後、周囲の人に話を聞いてピンときました」
どうやら、Sさんはあるオカルト思想にハマり、毎日その集会に通っているようだった。ちょうど1年前に妻が亡くなり、同時期に通い始めた。
そして、集会で知り合った人に代理業者を任せることとなったそうです。
「問題はその後です。私たちはSさんの代理業者として長くやっていたので、知り合いのお客様がたくさんいます。そのお客様たちが『新しい代理業者はどうなってるの!?』と怒ってきました。何人も、です。私はもう関われないのですが、相当管理がひどいようで……。結局、Sさんの会社もそこから経営が危うくなっていると聞きます」
何を信じるかは本人の自由だと思いますが、こういった例は、どう考えても悲惨であるとしかいいようがないわけです。
「自分ではどうにもならない不安」→そこから依存→失敗の道
ある教授のご意見は、こんな意見がありました。
「数億円失った人も珍しくありませんし、財産をすべて取られたケースも多数あります。自分の会社を占い師に乗っ取られた事例も聞かれますね。経営者や家庭を持つ人がハマるケースも多く、途中で妻が忠告したところ、妻を悪者に仕立て上げ、離婚に持ち込ませたパターンも多いです」
繰り返すが、スピリチュアルを信じたり、嗜んだりすること自体が悪いというわけではないって思います。
しかし、前にも書きましたように盲信した結果、大金や家族、会社を失うのは明らかに“失敗”ではないでしょうか?
それも、取り返しのつかない失敗だと思います。
ちなみに、スピリチュアルにハマる人の傾向について「世代間の明確な差はない」と思います。
つまり、若い人も中高年も同じようにハマるということです。
では、なぜ、人生経験を積んできた中高年が没入するのでしょうか?
「生きていれば、自分の努力や行いだけではどうにもならない事柄に直面します。そして、そこに大きな不安を感じるケースがあります。例を挙げれば、子どもの病気や受験、仕事なら部下の働きやトラブルなど。このとき、当事者は『運に頼る』しかなくなります。そこで台頭するのがスピリチュアルで、このタイミングで心を掴まれると依存を強めやすくなります」
という教授の見解もありました。
もちろん、最初は、多くの人が半信半疑の気持ちで助言を聞くと思うんです。
だが、そこで自分の性格を言い当てられたりすると、信じる気持ちは強くなります。
「たとえば高齢の女性が一人で占いに行ったとして、『これまでに恋愛で失敗したことがありますね?』と聞かれれば、ほとんどの人は『はい』と言います。これはコールドリーディングという手法で、大抵の人に当てはまることを、まるで言い当てているかのようにしているのです」
こういったことで信じる気持ちを強めすぎると、被害につながる可能性があります。
あるいは、利用されることがある。
もちろん、すべての占い師がそうとは言わないですけども・・・。
「日本人は、小さい頃から占いや血液型のタイプ分けなどを日常的に話題として楽しんでいます。そういった中で、自然とスピリチュアルへの親近感が醸成されています。このレベルで楽しむ分には問題ありませんが、もっと危機的な不安に直面した際、“実体がない”のをいいことに、スピリチュアルを使って相手を騙したり、都合よく利用したりする人がいることも事実です」
ある人から「これを買えば運気が良くなる。きっと◯◯は起こらない」と勧められたとしましょう。
もしも、実際に買って悪いことが起こらなければ、それを信じる気持ちは強くなります。
では、買ったのに悪いことが起きたら?
その際は「あなたの信じる気持ちが弱いからバチが当たった」あるいは「買ったからこそ、このくらいで済んだ」と返されるわけです。
そういった巧みな表現で騙す人がいることも忘れてはならないんです。
どうすれば依存なく楽しめるかスピリチュアルは「一見さん」が安全?
スピリチュアルな世界や、それをもとにした助言が、人の気持ちを楽にし、精神的な支えになることは確かにあると思います。
ただ、実体のないものだからこそ、悪用されることもあるわけです。
では、スピリチュアルに悪い形でハマらず、ほどよく付き合うにはどうすべきなんでしょうか?
ボク自身が考えるのは「もっとも安全なのは、『一見さん』を超えないことではないこと」だと思います。
常日頃から客観的に自分を見て、適度な距離を保って付き合えればベストなんじゃないでしょうか?
ただ、そのバランスを自ら保つのはかなり難しいのが現実です。
一度依存の方向へ流れ出すと止まれません。
ならば、継続的に会うよう仕向けたり、毎回も何かを買わせたりするなど、依存状態を作ろうとする相手は怪しむべきだと個人的に思うわけです。
つまり、何度も訪れる関係は、極力避けるべきということ。
足を運べば、それだけ個人情報を得られるので、相手のアドバイスが当たるのは当たり前で、逆にわかならかったら、それだけ希薄な関係性でしかないわけです。
そして、多額のお金を取られたり、家族や会社にまで影響力を及ぼされたりというケースは、何度も会う中で生まれています。
あわせて、スピリチュアルをまったく信じない知人がいたら、その人を遠ざけないようにした方がいいと思います。
自分を後ろに引っ張ってくれる存在が最後の砦で、騙すのが目的の人は、まず『信じない人』を周囲から排除させようとします。
そういった言動は、明らかに危険なサインではないでしょうか?
本来、スピリチュアルの助言者にとって、相談者の周囲にいる「信じない人」を排除する必要はないはずです。そういう人の意見もあっていいと思うからです。
排除したいという言動には、必ず裏の意図があります。
信じない人の話を出したとき、どう反応するか。こういったところも付き合い方の良し悪しを決める分岐点かもしれませんね。
適切な人と適切な付き合い方をすれば、スピリチュアルはちょっとした精神的な慰安や、日常を楽しむ一つのアクセントになることもあります。事実、ボクが大きな変化をもたらせてもらえたのも、スピリチュアルがきっかけであることは間違いありません。
ただ、信じすぎたときには、危険があることも忘れてはならないって思っています。
そして、その危険は“守るもの”ができ、無事や幸せを願う気持ちから始まるケースがあります。
だからこそ、中高年がハマっていくわけです。
もし、スピリチュアルと接する際は、そんな視点をどこかに置いておきたいなぁと感じる今日このごろでした。
ではでは。
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